工学部 電気電子工学科 1年次 工学基礎実験IⅠ
工学基礎実験IⅠ
電気電子工学科 1年次



第1週 ブレッドボード、テスタの使い方、抵抗・電圧・電流測定

今週の実験概要

 本実験は15週を通して、 PICを用いた電子回路の制御方法を身につけることを目的としています。今週は、PICを用いた電子回路作成の基本事項として、これから実験で利用する電子部品の名称や回路記号の理解、ブレッドボードの使い方、抵抗・電圧・電流の測定方法、LEDの扱い方について学びます。

実験で使用する電子部品について

 実際に利用するのは来週からになりますが、本実験で使用するPIC(図1.1)は、16F88と呼ばれるマイクロコンピュータです。このPICの端子は18本もあるので、実験回路に取り付ける際、端子を曲げてしまわないように、ゼロプレッシャーソケット(図1.2)と呼ばれるソケットを利用します。PIC本体の詳しい説明は、来週以降に行います。
 また、毎週利用する機材に、コンセントから回路に電源を供給するためのACアダプタ(図1.3)、ACアダプタを回路に接続するためのDCジャック(図1.4)があります。
 次に、パーツボックスに入っている、実験で使用する電子部品を表1.1にまとめます。実験の後半には更に他のパーツも用いますが、ここでは主要なパーツを挙げておきます。実際には見た目の多少異なる部品を使うこともありますが機能を考えて適宜頭の中で置き換えて理解してください。
 電子部品を用いた実験回路は、ブレッドボードと呼ばれる試作ボードの上に作成しますが、ブレッドボードについては次節で説明します。

図1.1 PIC(16F88))図1.2 ゼロプレッシャーソケット
図1.3 ACアダプタ図1.4 DCジャック

表1.1 実験で使用する主な電子部品
名称
写真回路記号
接続方法
備考
抵抗極性なしカラーコードの読み方は図1.5 を参照。
写真は上から順に実験でよく使う、330Ω(橙橙茶金)、1.5KΩ(茶緑赤金)、10KΩ(茶黒橙金)、330kΩ(橙橙黄金)です。
集合抵抗極性なし
印字面を上にして一番左が共通端子です。
写真は 470Ωが 8個入った集合抵抗です。
LED
(発光ダイオード)
Aが+極
Kが-極
長い足がA(アノード)、短い足がK(カソード)
コンデンサ
極性なし値の読み方は図1.5 を参照。
実験では 0.1μF のコンデンサを使います。
写真のような、茶色のタイプと水色のタイプがあります。 茶色のタイプはフィルムコンデンサ、水色のタイプはセラミックコンデンサと呼ばれ材質が違いますが、この実験で使う分には、特性の違いによる影響はありません。
セラロック
(セラミック発振子)
極性なしコンデンサと圧電セラミックで構成された、固有の振動数で発振する電子部品です。この実験では問題ありませんが、精度を要する場合は、水晶を使った水晶発振子を利用します。
タクトスイッチ極性なしボタンを押すと、
①②と③④の間が導通します。
(①と②、③と④は内部で導通)
ダイオードAが+極
Kが-極
黒い線がある側がK(カソード)、
反対側がA(アノード)です。
フォトトランジスタEが+極
Cが-極
長い足がE(エミッタ)、
短い足がC(コレクタ)です。
MOSFET第13週で説明します
セラロックと同じ3本足ですが、間違えないように注意して下さい。
スピーカ極性なし
DCモータ極性なし軸を上にして、右端子を+、左端子に-に接続すると右回転します。
逆にすると左回転します。


多くの場合「素子の値」か「素子の型番」が素子に書かれています。少し独特なので、抵抗とコンデンサの例を以下に示します。

図1.5 抵抗のカラーコード、コンデンサの値の読み方

ブレッドボードの使い方

 ブレッドボードは、図1.6 のように複数の穴が開いた板状の実験機材です。穴の開いた場所に電子部品を差し込んで、 回路を試作・実験するために使います。breadboard という名前は、昔パン生地をこねるための板を用いて電子回路の試作 を行っていたことに由来します。
 ブレッドボードの構造は、図1.6 に示すように、枠で囲った部分の穴が内部でつながっています。 たとえば、縦長の黄緑色で塗られた部分の穴は、同じ数字の列のf〜jが内部でつながっていることになります。 ただし、上半分のf〜jと下半分のa〜eは内部でつながっていません。 ボードの上側にある横長の青色で塗られた部分の穴は、横一列すべて内部でつながっています。 同様に、赤色で塗られた部分の穴も、横一列すべて内部でつながっています。 通常、青色の線と赤色の線が描かれていて、青色の部分の穴は、電源のマイナス(負極)を接続して利用し、 赤色の部分の穴は、電源のプラス(正極)を接続して利用します。ただし、上側にある+の穴と下側にある+の穴は内部でつながっていません。同様に、上側にある−の穴と下側にある−の穴も内部でつながっていません。
 実験では各素子が与えられた回路図と同じ接続状態になるように、電子回路をブレッドボード上に作成していきます。ブレッドボード内の接続が分からなくなったら、どことどこがつながっているかをテスターを使って確認してみましょう。

図1.6 ブレッドボード


テスタによる抵抗、電圧、電流の測定

 電子回路の抵抗や電流、電圧の測定には図1.7に示すようなテスタを使います。テスタには様々な特性を測定できるものがありますが、実験室に用意したテスタは電流、電圧、抵抗の計測に加え、バッテリーチェッカなどの機能もあります。

図1.7 テストリード収納時図1.8 テスターの各部名称


抵抗や電圧、電流を測定する際にはテスタのダイヤルを回して、測定モードを設定する必要があります。 図1.9〜図1.11 のように測定対象に合わせて適切に設定します。

図1.9 抵抗測定の設定 図1.10 電圧測定の設定 図1.11 電流測定の設定


 電流、電圧の測定時には測定対象が交流か直流かを選択する必要があります。 交流、直流は図1.12に表される記号で表されます。この実験では直流の電流、電圧しか扱いませんので直流に合わせます。 また、測定する電流や電圧の値によって適切な測定レンジを選ぶ必要があります。

図1.12 交流/直流を表す記号


 電子回路上の任意の2点間の電圧を測定したいときは、その2点にテストリードを接続します。 電子回路上のある点を流れる電流を測定したいときは、その点を開いてテスタを直列に挿入します。 中学や高校でも習ったと思いますが、今日の実験を通して正しい使い方を学びましょう。 電流と電圧の測定は、回路が上手く動かない時の原因を探るために必要になりますので、大変重要です。
 実験室にはここで示したテスタとは別にもう少し大きな緑色のテスタもあります。多少使い勝手が異なりますが、基本的な機能や使い方は同じです。

LEDの扱い方

 LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)は電流を流すと発光する電子部品です。 LEDの各部名称と回路図による表現を図1.13、図1.14に示します。
 LEDを光らせるためには、アノード(A:長い方の足)を+極に、カソード(K:短い方の足)を−極に接続して電流を流します。 これを「順方向に電流を流す」といいます。逆向きに接続しても電流は流れず発光しません。
 LEDは点灯している状態では電気抵抗が非常に小さくなるため、図1.15のように電源に直接接続すると電流が流れすぎてしまい、LEDを破壊する恐れがあります。

図1.13 LEDの端子図1.14 LEDの回路記号図1.15 LEDの誤った接続方法

 実際の回路では、図1.16の回路図のように電流制限抵抗と呼ばれる抵抗を挿入します。 この回路は、電源とLEDの間に適切な大きさの抵抗を入れることにより、LEDに流れる電流を制限して、LEDを破壊することなく発光させる ことができます。

図1.16 LEDの正しい接続方法

 LEDに加える電圧と流れる電流の特性をグラフに表すと図1.17のようになります。LEDは順方向に適度な電圧を加えることにより 発光します。一般的に、LEDを適度に光らせることができる電圧と電流を順電圧(VF)、順電流(IF)といいます。 標準的な赤色LEDの順電圧VFは約2V、順電流IFは約20mAです。 また、逆方向に電圧を加えた場合、実際には図1.17に示すようにわずかな電流が流れます。さらに、逆方向に加える電圧を大きくしていくと、 急激に大きな電流が流れ始め、LEDは破壊されてしまいます。

図1.17 LEDの電流-電圧特性

 LEDに適切な順電流を流すためには、電流制限抵抗の値を適切に求める必要があります。 LEDに流れる順電流IFは、電源電圧をE、電流制限抵抗をR、LEDの順電圧をVFとするとき、 下記の式(1.1)で表されます。
 この関係を用いて、適切な値の順電流が流れるように、電流制限抵抗の値を求めることになります。

(1.1)

実験

【実験1】 抵抗の測定

 パーツボックスに入っている4種類の抵抗(炭素被膜抵抗)について、図2.1のようにブレッドボード上に抵抗を配置し、 テスターの抵抗値測定機能を用いて抵抗値を測定してください。 測定結果は報告シートの表1のカラーコード(色順)と抵抗値の欄に記録してください。 抵抗の値は±5%の誤差が含まれているので、ぴったりの値にならなくても問題はありません。

図2.1 抵抗の測定

【実験2】 電圧の測定

 パーツボックスに入っている配線ケーブルを用いて、図2.2、図2.3のように配線を行い、テスターで抵抗に加わる電圧を 測定してください。実験1で測定した4種類の抵抗についてそれぞれ測定してください。測定結果は報告シートの表1に 追記してください。電圧が測定できない場合はDCジャックからきちんと電圧が取り出せているかどうかを確認してください。

図2.2 抵抗に加わる電圧の測定図2.3 回路図

【実験3】 電流の測定

 図2.4、図2.5のように配線を行い、テスターで抵抗を流れる電流を測定してください。 実験1、実験2で測定した4種類の抵抗についてそれぞれ測定してください。 測定結果は報告シートの表1に追記してください。

図2.4 抵抗に加わる電流の測定図2.5 回路図

【実験4】 LEDの電圧、電流の測定

 330Ωの抵抗を用いて、図2.6の電圧測定回路図を参考に、ブレッドボード上に回路を作成し電圧を測定してください。 次に、図2.7の電流測定回路図を参考に、ブレッドボード上に回路を作成し電流を測定してください。
同様にして、電流制限抵抗を1.5kΩ、10kΩ、330kΩとしたときの、電圧、電流を測定してください。これらの測定結果は報告シートの表2に記録してください。

図2.6 LEDに加わる電圧の測定図2.7 LEDに流れる電流の測定

【課題1】 電流制限抵抗の計算

 順電圧が2VのLEDに5Vの電池と電流制限抵抗を、図2.8の回路のように接続する場合を考えます。 LEDに流れる電流を 10+x [mA]とするためには、電流制限抵抗を何Ωにすればよいか求めましょう。 ただし、x は各自の学籍番号下1桁を入れてください。報告シートには答を求めるための式と答を示してください。 答の小数点以下は四捨五入してください。この実験では実際に回路を作成する必要はありません。

図2.8 電流制限抵抗のを含んだLED回路

【課題2】 ブレッドボードの構造

 ブレッドボードの内部構造を理解して第1回報告シート課題2の各問に回答してください。